むかし話あれこれ
水大師さん
お大師さんにまつわるお話は、牟礼にもいくつかあるけれど、 八栗参道の清水がお大師さんのお陰って、知らなかったなあ。
むかし、弘法大師が修行の為に五剣山に登る途中の落合で、ある一軒の農家に立ち寄り「お水を飲ませてくれませんか」とたのみました。
すると、老婆が出てきて「ハイ、今からくんでまいります」と心よく谷川まで手桶をさげて清水を汲みに行きました。 急いで帰り清水を弘法大師に「どうぞ」と差出しました。 弘法大師はにっこりと笑いながら「ありがとうございました」と飲みました。
それから、老婆がぽつりぽつりと弘法大師に話をはじめました。 「ここらはな、落合というてな、山坂で雨が降っても水は流れてしもうてな、お米を作るにも、いつも水が不足して、私が嫁にきて50年余になりますが、お米の豊作は数えるほどですわ、あぁ、水がほしい」となげきますと、弘法大師は「それは、それは、おこまりでしょう。私が水を出るようにしてあげます」と右手にもった尺丈で家の前の道端を掘りはじめた。 「般若心経」を唱えながら一生懸命に約2尺ほど(約60センチ)掘ると、清水がこんこんとわき出てきました。
老婆は涙を流し、両手を合わせて、弘法大師にお礼を言いますと、弘法大師は「お水を飲ませてくれたお礼です」と一言いって夕暮の山道を五剣山へと登っていきました。
あとでこの老婆はあの人が有名な弘法大師かと気づきました。近所の里人は誰いうとなく「水大師」と呼ぶようになりました。 現在、八栗参道に水大師として約1200年も前から清水が出ています。