むかし話あれこれ
堀越の皿池
むかしむかし、源平合戦から約百年あとのことです。
牟礼の郷の南に山があり、その山にはとても悪い高坊主が住んでいました。夜になると里に出てきて、なんでもなめる、悪い悪い高坊主でした。
そのころ、堀越のさしもの池近くに、豪農で熊吉という主人と奥さんが使用人8人と住んでいました。
ある夜のこと、高坊主が熊吉の家にきて、大声で「熊吉なめようか、みそなめようか」と言いました。これを聞いた奥さんが、「熊吉なめずに、みそなめよ」と言うと、高坊主はその家のみそ倉に入り、朝の3時頃までかかって、一年みそ、二年みそ、三年みそと、全部なめてしまいました。
するとのどがかわき、両手でさしもの池を持ち上げ、皿のようにしてぐいぐいと池の水を全部飲んでしまったのです。そしてもだえ苦しみ、大樹がたおれるように「どん」と大きな音とともに倒れて死んでしまいました。
その頃には夜もあけて明るくなり、里人は昨夜のものすごい音に何ごとかと、さしもの池の堤に集まり、死んだ高坊主の死体を見てびっくりしたと言われています。
この池が皿池と言われるようになったのはそれからのことです。